地の底の笑い話は北風に絶え

辛淑玉・野中広務対談「差別と日本人」(角川oneテーマ21)には、辛い話が多いが、辛さんの石原慎太郎、小泉純一郎等々、とりわけ麻生太郎への鋭い人物評が面白い。我が故郷も九州の炭坑町、筑豊・田川であり、身につまされる。「父を焼く〜上野英信と筑豊〜」はお嬢様の(あかし)さんが上梓した一冊で、ジュンク堂では、なんと労働法コーナーに置いてあった。上野英信さんは「地の底の笑い話」の著者であり、挿絵の山本作兵衛さんは、小生高校3年生の文化祭で作品展をやった。幾星霜、小生も丸くなってしまったのだろうか。(12/10)

寒菊や惹句にうつつのランカイ屋

還暦を過ぎてから出会った最高の友は七痴庵である。といっても、ある句会で一度会ったきりだが。まあ、往復書簡のようなことを続けている。彼の営む古本屋を「なないろ文庫」といい、そこから「ななちゃん」の愛称が生まれ、俳号「七痴庵」へと至ったらしい。彼は古書店界に知らぬ者とてない情報誌「彷書月刊」の編集長でもある。ランカイ屋というのは、店を持たず古書即売展覧会に参加しながら、細々と目録で商いをする古本屋さんのこと。七痴庵さんも、かつてはそういう商売をやっていたらしい。今は食道癌と闘いながら、軽妙洒脱な俳句づくりを遊んでいる。もうしばらくはご一緒に遊びたいものだと願っている。(12/01)