稲積に漠の集まる少年期

毎日の暮らしの中で見慣れた風景だったのに、「へえ、そんな名前があったの」と、後で教えられる事も多い。稲刈りが済んで切り株が殺風景に並んだ田圃を「穭田」と言うのだと、つい最近知った。「ひつじだ」と読むことも。歳時記にもちゃんと記載されている。こんなに魅力的な名前があったなんて。
そして、子供の頃、学校帰りに焼き芋を買って駈け込んだ隠れ家を「とうしゃく」と呼んでいた。藁を太く丸い束に縛り上げて、それを積み重ねたもの。子供達は、その中をこっそり刳り抜いて、数人が入れるようにし、隠れ家として密かな王国を築いていたのである。「としゃく」と呼ぶ地方もあり、そちらの方が主流のようであるが、とにかく漢字でどう書くかは知らなかった。「なるほど、そう書くのか」と納得のいく漢字である。季語ではないが、初冬の風物詩であったことには間違いない。(12/29)

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