坪庭に今年も梅の健気さよ

祖父は庭の木や石をいじるのが好きであった。剪定をしたり、添木をしたり、位置を変えたり。ほとんど無目的で、ただいじっていたいだけといった風であった。祖母は庭を見ているのが好きであった。何を見ているのか定かでないような茫洋とした視線で、けれど飽きることなく見詰めていた。二人は、他のあらゆることと同様に、庭に関してもほとんど会話を交わすことはなかった。庭には、松や樫など緑を競う樹木が多く、花を愛でるという風情は少なかったように記憶している。そんな庭にあって、紅梅は異色の美しさを放っていた。今年の梅を見て、遠く祖父と祖母の居た時代があったことを想い出した。(2/21)

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