十薬どくだみの濃きは世間の濃きに似て

子供の頃に済んでいた田舎の家は便所が一番北側にあって、その裏の庭は湿って澱んで薄暗くて、十薬が密生していた記憶がある。父親から庭の雑草取りをやらされるのは、辛い仕事だった。コウブシは細い根を掘って抜くという面倒な作業を強いられる。ドクダミは軍手をしていてもいやな臭いが付いてしまい一日くらいでは取れない。とりわけドクダミは視覚的にも異常な、他に見たことの無い、この世のものとは思えない色をしていて、めったに行かない裏庭の薄暗い場所に密生していることもあって、子供ごころには奇妙な恐怖心を抱かせた。この植物が、大きな効果を発揮する漢方薬になるという事実は、ずっと後になって知ることとなる。梅雨時になると想い出す雑草である。十薬(6/11)

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