どんな世も空気の美味い新学期

大人用の自転車に両手を離して乗れるようになったのは小学四年生の春だった。「どこまで遊びに行ってもいいけど、往還を越えちゃあいかんよ」と言われていた。その往還も、まだ舗装されてはおらず、時折とてつもなく大きなトラックが粉塵を巻き上げて走り抜けるだけで、交通量とてほとんど無かったように記憶している。その往還の下り坂を、両の手を思いっきり広げて、目一杯のスピードで、一気に下り降りるのは、なんとも爽快であった。変な言い方だが、「うん、これで俺も兄貴分になった」といった気分であった。その往還を30分ほど歩いて、右へ折れる。貴船神社のある細く険しい小峠へと分け入り、また30分ほでかけて登り下りすると、やっと目的の小学校が見えてくる。長い道のりだから、鬼ごっこばかりしながら通学していた。時代が変わっても、新学期は何もかもを新しくしてくれる。新学期(3/23)

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