陽を浴びて色淡くする春帽子

もう5~6年も前になるだろうか。中南米への取材旅行を敢行した友人のカメラマン氏から土産でいただいたシルクハットの色が、たまらなく気に入っている。少し緑を帯びた青なのだが、それ以上の上手な喩えようがない。室内にあっては、黒を含んだ少し暗い色に感じるのだが、太陽の光の下に出ると一変、軽快だけれど軽薄ではない心に沁みる明るさ、切ないまでの深みを醸し出すのである。天然の素材から絞り出された色は、その土地でしか得られないもので、この国での自分の生活の周辺からは絶対に発見できない。遠い異国の歴史や文化・生活に思いを馳ながら、光も風も心地よい街へ出掛けるのは、春の醍醐味のひとつである。この帽子をかぶってね。春帽子(4/2)

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