欄干に聞く名も知らぬ囀よ

肝胆相照らした同窓会の翌朝、割烹旅館の欄干に寄り掛かって、彼等は「あっ、小綬鶏だ」、「あれは鶸だ」、「鷽もいるね」と、声を聞いて鳥の名を言う。鳥の種類や草花の名前に詳しい友人達が、羨ましいかぎりである。こっちはさっぱり分からないのだから。どうしたことか豊かな自然の中で育っていながら、学ばないで来たことが余りに多く、残念でならない。そして齢六十を越えてしまった。「ああ、あれはなんという名の鳥なのだろう」と耳をそばだてている自分が哀れでならない。ちなみに頬白の鳴き声は「源平つつじ白つつじ」あるいは「一筆啓上仕り候」と聞こえるそうである。そういう風に聞くというのも異能の人と言うべきでありましょう。(3/16)

コメントは受け付けていません。