背伸びして樹液を零す少年よ

地方の美術館に立ち寄った時、中学生の集団と鉢合わせになった。絵画をゆっくり観るどころではない。走り回る男の子たちは、甲高いボーイソプラノで囀っている。その中に一人だけ、喉にひっかかるようなダミ声を出す子がいた。可哀想なようでもあり、一歩抜きん出ているようでもあり。話かけるなら彼かな、と思った。第二次成長期、反抗期反抗期、変声期、そんなことを言われた年代が自分にもあった。遠い記憶ではあるが、「死」について真剣に考えている頃でもあった。必然的に死は近づいているのに、反比例して死について(怖れることはあっても)考えることはほとんどない。この体内を満たしている比重の薄い液体は何なのだろう。(3/8)

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