一村に守る唄あり霜くすべ

早朝、関東平野の外れを車で走っていると、山麓に長く棚引く霜くすべを見た。デジャブなどではなく、故郷の九州の寒村とまったく同じ風景であった。「ああ、この国は、何処も同じだなあ」と痛感した。田舎ではひとつ村が違えば、メンコやビー玉( パッチンとダンチンと言った)のルールも違うし、歌う唄の歌詞や節回しが微妙に異なっており、それで在所が分かったものである。同じ風景の中に、微妙に異なる生活があったのだ。歌をその事を如実に伝えてくれる。田畑から歌が聞こえることの少なくなった昨今、口を突いて出るのは何やら愚痴めいたものが多くなったような気がする。浪々と響かせる唄よ甦れと思いつつ、山麓の霜くすべを見詰め続けていた。(2/10)

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